Last Modified on April 12, 2003.
分子動力学(MD)シミュレーションのよる
配向秩序ドメインの剛体性解明

プラズマでは、長距離相互作用(クーロン力)が支配的である。一方、高分子系では、近距離相互作用(分子間力)が重要となる。両者の相違を見ることが自己組織化シナリオの普遍化に役立つと考え、高分子系秩序形成研究を始めた。その結果、我々は、非線形近距離相互作用による剛体化という多体効果を発見した。それについて、説明する。

研究対象として、簡単な分子構造をもつ鎖状分子系(ポリエチレン)を扱った。分子間には、Lennard-Jones(LJ)ポテンシャル(非線形近距離相互作用)が働く。この系は、「局所配向秩序ドメイン(以後“ドメイン”と略す)の接触・合体の結果として広域配向秩序が形成される」と、報告されていた。

この報告では、接触したドメインの合体プロセスの詳細は不明であった。我々は、ドメイン合体にこそ相互作用の影響が強く現れると考え、ドメイン合体プロセス解明に取り組んだ。2つの配向の異なるドメインからなる系をMDシミュレーションで調べると、各々のドメインが一つの集団として “剛体”のように動き、合体していくことが分かった。しかし、我々は、LJポテンシャルという弱い相互作用系での剛体性を奇異に感じ、原因解明に踏み込んだ。

 ドメインの最小単位の分子構成を取り出し、LJポテンシャルを定量的に求めた。その結果、LJポテンシャルの非線形性のため、秩序時には系全体のポテンシャルが深い谷状になることが分かった。このため、分子間力が共有結合程度まで強化されていた。これが剛体のように分子を結合していたのである。

 以上により、鎖状分子秩序形成時のドメイン合体の詳細を明らかにし、一連の鎖状分子系の秩序形成シナリオを導き出した。

 なお、本研究では計算結果解析を、音響表現機能を組み込んだVirtual Reality(VR)装置により行い、VRのシミュレーション応用成功事例となった。


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