磁力線再結合の挙動を長時間追跡する上で重要な開放系条件を満たす高精度な粒子コード開発に成功した.
異なる向きの磁力線が繋ぎ変わる磁気リコネクションは,宇宙や実験室プラズマで共通して発生する普遍的な基礎プラズマ過程の一つであり,例えば,太陽表面で発生する爆発現象である太陽フレアや,地球磁気圏で起こるサブストームでは,この磁気リコネクションが大きな役割を果たしていると考えられています.この研究では,開放系電磁粒子シミュレーションによって,無衝突駆動型磁気リコネクションのダイナミクスやプラズマ不安定性を調べ,ミクロなレベルから異常抵抗の発生機構やエネルギー解放機構を解明することが目的です.

長時間スケールの磁気リコネクションのダイナミクスを追跡する上で,開放系条件を満たす上流及び下流境界を持つ電磁粒子シミュレーションコードの開発は必須です.例えば,これまでの研究から,磁気リコネクションの長時間にわたる振る舞いが境界条件によって間欠的あるいは定常的になることが分かっています[1].これは,磁気リコネクションを引き起こすミクロスケールの物理過程が,境界を通じてミクロ系内へ流れ込むプラズマ流のパターン等のマクロな物理量に強く依存していることを示しています.我々の採用したモデルでは,上流境界は理想MHD条件を満たしているものと仮定し,境界にかけられた駆動電場によるE × B ドリフトによってプラズマをシミュレーション領域に流入させ,下流境界では自由境界条件を採用し,系の発達に従いプラズマが自由に出入りできるようになっています.

この開放系粒子モデルの開発において重要なことは,如何に境界で発生する数値ノイズを減らし物理的に信頼のできる結果を得るかです.最近,我々のグループでは高い数値精度で開放系境界条件を満たすモデルの改良に成功しました[2].図1に,3次元開放系電磁粒子シミュレーションコード(PASMO)によって計算した磁気リコネクションの磁場構造を示します.開放系境界条件の有効性を調べるため,短いボックス(上図)と長いボックス(下図)で結果の比較を行いました.下図で駆動型リコネクションが発生している中央領域を上図が模擬しており,境界条件の有効性が確かめられました.図2にリコネクション点近傍での電流密度とリコネクション電場の時間発展を示します.短いボックスと長いボックスでの計算結果が一致していることが分かります.

この論文に掲載された図はプラズマ・核融合学会誌857号(2009年)の表紙を飾り,さらに最新の成果を含めた発表が2009年冬のプラズマ・核融合学会の招待講演として行われる予定です.

 

[1]W.Pei, R.Horiuchi and T.Sato: PoP 8 (2001) 3251 [DOI: 10.1063/1.1375150].

[2]H.Ohtani and R.Horiuchi: PFR 4 (2009) 024 [ DOI: 10.1585/pfr.4.024].

1. 3次元開放系電磁粒子シミュレーションコード(PASMO)によって計算した磁気リコネクションの磁場構造.開放系境界条件の有効性を調べるため,短いボックス(上図)と長いボックス(下図)で結果の比較を行いました.下図で駆動型リコネクションが発生している中央領域を上図が模擬しており,境界条件の有効性が確かめられました.カラー線は磁場フラックスを,カラー等値面と等高線は磁場のリコネクション成分を表します.

2. リコネクション点近傍における電流密度とリコネクション電場の時間発展.実線,点線がそれぞれ短いボックスと長いボックスでの結果を表しています.両者がほぼ一致することが示されました.