磁場閉じ込め核融合の実現には、炉心プラズマの閉じ込め改善と同様に、実際の炉を形作る炉材料の研究開発が重要です。中でも周辺プラズマと炉壁のプラズマ壁相互作用は、ダイバーター板の損耗や、プラズマ不純物となる炭化水素分子発生を引き起こす重要な問題です。さらに、将来的な自己増殖燃料リサイクリングの成功の為には、材料奥深くに侵入したトリチウムや、ダストの再堆積によって炉壁表面に溜まるトリチウムの蓄積量を軽減せねばなりません。これらの解決策を理論的に研究する為に、我々のグループではナノスケールの原子分子挙動を分子シミュレーションによって解析しています。これまでに、Brennerらによる
reactive empirical bond order (REBO)ポテンシャルモデルにさらに改良を加え、さらにREBOポテンシャルに滑らかに接続可能な層間相互作用モデルを新たに開発し、ダイバーター表面での化学スパッタリング機構の解明を行ってきました。今後は、より大規模スケールまで扱う為の新しいモデル開発(二体衝突近似と明記するか否か)や、炉壁表面での再堆積によるアモルファス炭素材の形成機構の解明にも努めていきます。